アーキプラス

2012.09.30

9.美しい応援

コラムcolumn
 久しぶりにサッカー観戦をした。初めての埼玉スタジアムである。最寄り駅の浦和美園駅からは20分ほど歩いてゆかなくてはならない。試合開始1時間前であったが、20mぐらいの幅の進入路は人で埋まっている。ほとんどの人が赤いユニホームを着て、既に赤一色だ。浦和レッズvsガンバ大阪の試合である。名門同士の対戦カードである。野球でいえば巨人阪神戦、スペインサッカーでいえば、レアルマドリッドvsバルセロナといったところか。以前日本リーグで人気のあった三菱重工vsヤンマーでは1960年代から国立競技場をいっぱいにした。それに匹敵するゴールデンカードである。双方日本を代表するクラブチームだが、今年のレッズは優勝争いに加わっているが、ガンバはJ2への自動降格争いの真っ只中といったところで、だいぶ分が悪い。
 私は高校時代サッカー部に所属し、サッカー一途の生活をしていた。まわりから相当に冷ややかに見られていた。当時はオリンピックで銅メダルを取り、注目はされていたが、野球が全盛で、ワールドカップの存在すら知られていなかった。高校がサッカーの聖地国立競技場が近くにあったせいもあり、プロチームが来日すると当時どうしてわかったのか覚えていないが、国立競技場で公開練習を授業サボって見に行った。サントス、ボルシア、アーセナルなどを見た。今から思うとなぜ、近所の高校生がいとも簡単に見ることができたのが不思議に思われるが、当時のセキュリティはその程度のレベルであったということだ。また、当時から、代返が横行し、制服など着てゆかなくてもよかった自由な校風からでもあったと思う。1993年Jリーグが発足し、企業スポーツから地域スポーツに転換された。各チームは地域を中心とした育成を行ってきた。今や子供たち一番の人気スポーツになり、各レベルが底上げされ、現在の男女日本代表の原動力となっている。隔世の感がある。
 試合が始まった。国際試合でもないのにプロ野球は毎試合開始時に行う間の延びた国歌斉唱がないのがいい。バルコニー席の中央に近くに座る。戦局がよく見える。名前を知っている選手が多かった。が、それが誰かはわかりにくい。とりあえずピッチと電光ボードに記されている背番号と選手名を交互見ながら、観戦する。首が疲れる。レッズの応援は2007年FIFAクラブワールドカップで3位に入賞した時にワールドクラスと賞された。迫力がある。毎日のように繰り広げている、プロ野球とは違い、ホームでは2週間に一度だから気合が入っている。バックスタンドでスタンディングでの応援団の合唱が途切れなく続く中、味方の好プレイには拍手ですぐに対応する。実にやさしい。敵陣へのブーイングもあるが、これは意外とおとなしい。一方ガンバの応援は孤軍奮闘だが、1点先行し、勢いがありノリがよくなる。レッズファンのつもりだったが、思わずガンバの応援もしたくなる。判官贔屓ということか。
 あっという間の90分間であった。後半レッズは逆襲を図ろうとしたが、終盤に3点たてつづけに取られ、結果は下位低迷のガンバ大阪が、好調浦和レッズをなんと5-0でこのアウェイの埼玉スタジアムで圧勝してしまった。観衆は46046人と発表された。この大観衆の熱狂の中で試合展開は常に偶発的だ。翌日の報道ではレッズがサポーターから強烈なブーイングを喰らったとか書かれていたけれど、ピッチ全体での雰囲気としては大勢のレッズファンはただ呆然としていただけだった。近隣の諸国で日本代表が国際試合をするときはこうはいくまい。過去一部Jリーグで懸念されたことがあるが、だいぶ修正されている。日本のスポーツファンのマナーは、成熟しつつある。このまま進化し世界のモデルとなるようになってほしい。ついでに政治・外交もそうならないかなと思う。
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