アーキプラス

2013.06.30

18.草臥れること

コラムcolumn
写真:「現在計画中の高輪プロジェクト」
 くたびれることが好きだ。子供の頃は、少年野球、柔道、水泳と、今でもランニング・フットサル・テニス・ゴルフなどでいろいろと体を動かしている。くたくたに疲れた体の状態に浸るのが心地よい。別にサディスティック志向があるわけではない。30代のころは少し怠けたため、停滞期間があったが、40代からまた体を動かしはじめた。ヘタクソでも体が活性化するのを身で感じることは気持ちいい。しかし、生来運動神経はよくない。また頭を使って賢くこなすほどの知力もない。ただ、体力(耐力?)だけはある。持久力はそう変わらないと思う。所詮スポーツは、観ることもすることも楽しくて気持ちよければいいのである。
 大学一年の冬、今から40年ほど前のこと。土曜日の朝、横浜の大学まで2時間かけて行く。午前は授業があり、6時起きで出かける。その頃はあまり授業に出席していなかったが、午後にアメリカンフットボール部の練習だけはでていた。ついでに授業に行くようなものであった。昼食後、練習。当時の部員の中では体が大きかったため、ラインメンとなる。攻撃チームの前線を形成する選手で、先頭に立って敵の防御に対して体でぶつかり、道を切り開く役目である。練習のほとんどがワンワン(1対1)という相撲の立会いのような基礎練習をヘルメットと防具を着てする。気慰めにパスの練習もする。クォターバックからの鋭く回転したボールを胸元でキャッチする。3時間の練習を終え、クタクタになるもまた学食で夕飯をすます。
 夜は埼玉の狭山スキー場でアルバイトである。家から1時間ぐらいで行ける人工スキー場だ。アメ横で買ったカーキ色のダッフルバックに防具やスパイク、ユニフォームを背負って、電車で移動、3時間近くかかる。土曜日はオールナイト営業で、その冬は徹夜のアルバイトを毎週行っていた。仲間に高校同級生のバスケットボール部がいた。奴は一橋大学だから、近い。こちらは、猛練習の後の大遠征である。スキー場では飲み物、カレーライスなどをサービスする。10時間ぐらい立ちっぱなしである。翌日は、中学時代の仲間とつくったサッカーチームの試合が世田谷であった。桜丘中学校の名前をもじって、イングランドの名門チームチェルシーにあやかって、チェリシーというチームであった。カンテツ(完全徹夜)の後の午前の試合である。トーナメント制で午前の一戦に勝ってしまったため、午後も試合をやることになった。30分ハーフ60分で決着がつかない。10分ハーフの延長20分やっても決着がつかない。再延長をやり、敗戦。疲労の将棋倒しのようなものであった。しかし仲間と久しぶりの対面、麻雀をやろうということになった。2年前まで住んでいた千歳船橋に行き、雀荘で5時間、卓を囲んだ。帰りの電車の中で泥のように眠る。終電で家に着く。ベッドに入った瞬間深い眠りに入った。今思えばこんなことでは活性化どころか、体が不活性化してしまう。
 以前から集合住宅を立体化ユニットでつくっている。当初はシンプルな仕組みのみであったが、より細かく対応するためにいろいろなタイプを考えてきた。その組み合わせの立体パズルを解くことが多い。非常に複雑な操作をするためにくたびれる作業である。しかし、楽しい作業である。何時間も考え続ける。普段考えない脳の部分を使うせいか、作業をしている中で何か脳が活性化してきているような気がしてくる。やっぱり私はくたびれることが好きだ。立体の深みに嵌まり、空間に飲み込まれないようにしなければ・・・・・。
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