アーキプラス

2013.07.31

19.風呂好き

コラムcolumn
 写真  オナーズヒル軽井沢クラブハウス(2002年竣工)の浴室
     前に飛び出している風呂は、全面開放でき露天風呂となる。
     ガラス戸を開けば行き来できる
     水盤の先に浅間山がくっきり見える展望風呂でもある。
 撮影  斎部功  photo by Isao Inbe
 よく温泉に行く。海外の温泉にも行った。イギリスのバース、Pズントー、Jヌーベル設計のスパなどにも行ったが、いずれもあまり温度が高くなく、水着着用の療養をかねたリゾート施設であった。真っ裸で熱い湯でくつろぐ日本の温泉または風呂とは少々異なった風情である。これは江戸期大衆に広まった銭湯の影響による独特の温浴文化なのだろう。しかし、日本の中でも関西が低めで、関東が高いというように多少の違いがある。個人的には夏は関西がよく、冬は関東のほうがよいと思う。
 3歳の頃住んだ小金井の木造の社宅には共同風呂があった。時間帯で男女か交互になり、夕方になると子供は毎日、母親に連れられていっていた。5歳の頃、世田谷区の千歳船橋に移った社宅では各戸に小判型の木桶風呂がついていた。モルタルの上に木のスノコが敷かれ、銅製のガス釜が内蔵され、釜の上部に上がり湯があった。何年に1回かは新しいヒノキの風呂桶と交換する。ヒノキの香りは格別であった。徐々に風呂好きになってゆく。当時、風呂は都営住宅にはなく、公団等にあったが、銭湯を通じたふれあいと大きな浴槽は、羨ましくもあり、時折、銭湯に行ったものである。
 別の活用法として、水風呂があった。子供の頃はクーラーなどなく、暑いときは洗濯用の残り湯にそのまま入った。気温ほどにさめた水は、入りやすい温度だが、体温よりも低い。水は熱伝導が空気に比して高いため、体温が奪われ、涼しさが感じられた。また、あがったときに生じる、気化熱によってさらに涼感が得られた。夏の暑さ対策は、プールに行けない日はこれであった。
 現在、我が家では24時間風呂の床壁タイルに埋め込み型ホーローバスを使い、早20年たっている。24時間風呂は衛生上の問題が指摘されたこともあるが、実際には1件も事故は起こっておらず、廃番にしたメーカーが数多い中で、残ったメーカーは万全の仕組みを整えている。数年前にシステムを交換したが、以前にも増して快適で清潔な温浴環境を提供してくれる。一日2回以上風呂に入る。冬は一日に何回も入り、湯上りを楽しむ。小原庄助流ライフスタイルは温泉場で暮らすようなものだ。特に、ランニングなどの運動の後に入る風呂は格別である。筋肉がほぐれ、疲れが飛ぶ。
 温泉は2回設計したことがある、外と内がつながり、行き来できるスタイルである。これは、奥飛騨平湯温泉の露天風呂の仕組みを取り入れた。お湯はつながるが、湯面より上の部分にガラス戸があり、普段は区切られているが、空ければそのまま露天風呂に出ることができる。あまり見かけないが、便利な仕掛けである。露天風呂を作るならこの方法をお勧めする。
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