アーキプラス

2013.12.31

24.立体最小限別荘の夢

コラムcolumn
写真:軽井沢の別荘2013年12月竣工
 軽井沢に別荘が完成した。施主は以前、ハワイの別荘でゆっくりとすごそうと考えていたが、さまざまに沸き起こる業務に追われ、近くにありながら、日常的に非日常の自然が味わえる軽井沢に新しく作りたいということになった。御姉妹の別荘が軽井沢にあり、以前から良く使われていたので、すでに地域でお付き合いは確立し、オフを楽しむ社交の場となっていた。お互いにお子さんたちに家族ができ、4人おられるお子さんの家族ともゆったりと使えるというご希望であった。
 部屋の大きさは親戚の別荘と同じ、パーティ用の広いデッキがほしいという条件であった。普通と比べるとかなり大きい。25㎡の広いベッドルーム2つと70㎡のリビングダイニングの母屋があり、100㎡ほどあるデッキをはさんで45㎡の離れをつくった。雨にぬれず行き来ができるように一部は屋根付の渡り廊下とした。2つを繋ぐデッキは天井の高い(2.9m~3.8m)リビングルームに吸収され、水廻りの上部のロフトをも併合し、とてつもなく大きく感じられる空間に仕上がった。普段賃貸用のコンパクトな住居を設計しているため、スケール感が大いに異なったが、広がり、それに伴う立体感を262㎡の平屋建ての中で一体的につくることができた。各部屋の日当たりもよく、ハイサイドライトからの樹木の写り込みも相俟って、居心地は予想を超え、とても喜んでいただいた。とても嬉しい。
 月に3回ほど現場に行った。東京から約一時間ほどでつく。軽井沢では10年ほど前ある別荘地のクラブハウスを設計し、その関連で別荘も1棟設計した。しばし通ったものだが、軽井沢もここ十年でずいぶん変化した。平日でも、多くの人を見かける。以前はガラガラだった長野新幹線もだいぶ混み合い、大宮で満席になることが多い。レストランも長年の淘汰を経たつわもの揃いで、質が高い。食材も豊かである。美術館、ギャラリー、ショップも増えた。イベントも多い。生活の質も都市を凌駕する勢いである。
 以前苗場スキー場のゲレンデの前に別荘の集合体※を設計した。直径3.5mの大きな丸窓が特徴だが、その丸窓の中は吹き抜けのメゾネットとなってどこからもゲレンデの風景と一体となる他にはないリゾート空間であった。約80㎡のユニットだが、ソファベッドを使えば、最大8名がゆったりと過ごせる。現在は、会員制リゾートクラブの人気宿泊施設となっている。施主は、伊豆と山中湖にも別荘を持っていた。ノールウェー製の規格品の別荘であったが、これが賞を獲得した優れものでした。2.1m角のキャビン(立体的に3人が寝ることができる)が3つと主寝室、サウナ、バストイレ、暖炉付のLDK+大きなロフト、デッキがついている。約80㎡で複数の家族が寝泊りできる。その別荘を事務所で3回借り、パーティに使わせてもらった。一番多いときでは20人ぐらいいたように記憶している。コンパクトだが、効率よく楽しい空間であった。その別荘を超えるものを考え付いたら、自分の別荘を作りたいと考えていた。
 紆余曲折を経ながら、今作りたいと思っている。敷地は富士山の麓。一辺4.55m×4.55m×4.55mの立体空間である。約20㎡の空間は今度設計した別荘の14分の1の大きさであるそこに大人4~6人が楽しめる空間である。3畳ほどのロフトが2つ、3畳の個室は
6畳のアイランドキッチンのダイニングにつながり、3畳ほどのデッキに出ることもできる。今回できた軽井沢の別荘とは対極的である。秘策のプランなので公開はできないが、立体最小限住居の決定版と自負?している。乞うご期待!ただ、維持費のかかる別荘よりも旅行派の妻を説得しなければならない。それが最難関である。自宅のソーラー発電でためた電気自動車に乗って、毎週のように自然の中で暮らすのが夢である。

※ 苗場プリヴェ(1988年竣工 設計:ワークショップ 北山恒、木下道郎と共同設計)
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