アーキプラス

2012.01.31

1.くるまの話1

コラムcolumn
 小さいころから乗り物が大好きでした。特に車は、近所の八百屋、酒屋さんのおにいさんにお願いして、配達のオート3輪や軽自動車助手席に乗らせてもらうのが放課後の楽しみでした。でも交通図鑑に描かれていたポルシェとかサンダーバードとかのスポーツカーには興味ありませんでした。
 そんな私が、実際に使うくるまはやはり実用的なものでした。いわゆる箱型のセダンまたはスポーツカーにはまったく興味がなく、最初に買った車はホンダZでした。360ccのミニカーで、大学2年の時、家庭教師や肉体労働のアルバイトを必死に貯めて中古車を買いました。これは4人乗りですが、後ろの窓が開き、後部座席を倒すとA0の製図版やB1の大きさの敷地模型が運べました。360ccとはいえ、第三京浜を時速120km以上で楽々走ることが出来る優れものでした。
 しばらくして、中古のニッサン・チェリークーペに乗り換えました。これもコンパクトカーですが、中もだいぶ広く、スピードもさらに速くなりました。友人の引越しにも威力を発揮しました。この調子で後ろが開くステーションワゴンタイプを乗り継ぎ、5代目は新車のパジェロ・ロングでした。これはとても頼もしかった。箱型でシートの高さが高くなり、まるでトラックのように感じました。7人乗りで、荷物もたくさん積め、屋根も使えました。悪路や雪でもヘッチャラでした。時はおりしもスキーブームで、動くリビングルームのように毎週のように出かけました。
 車というといかに暮らしの中で使えるかということがまず頭にうかびます。パリ・ダカールラリーでも、カミオンクラス(オフロードトラック)、日野レンジャースvsダフトラックなんかについ興味を持ってしまいます。CasaBRUTUS2004年7月号で「あの建築家が選んだ車」というアンケートがあり、私はワーゲンバスを選びました。多くの建築家は、スポーツタイプか、箱型に二分されていましたが、同じ箱型でも一番大きいのが、私の選んだワーゲンバスでした。
 そんな調子で6台目のニューパジェロにいたっては性能も大きさもさらに上まわり、無敵の動くリビングルームとなり、10年以上乗り続けました。ディーゼル車への風当たりが強くなったころ7台目としてホンダ・ラグレイトに乗り換えました。コンセプトはファーストクラスの機内だそうで、全長5.105㎜、幅1.935㎜、高さ1.740㎜の空間に3500cc240馬力エンジンは、極上の乗り心地でした。しかし、今まではいずれも国産で基本的に燃費がよかったのですが、この国産ブランドはカナダ製で車重もあり、燃費が悪いのに気づきました。気がついてみれば、あまりの大きさにスタッフは運転を嫌がり(というよりは怖がり)、自分で運転するばかりで大きな空間に一人乗りのときが多かったのです。そんなこんなで8台目は誰でも簡単に運転でき、燃費もよく、機動性もある実用的なホンダ・フィットにしました。これで充分でした。
 自宅は、18年前建てました。機能的に配列した設備や収納空間をつなぐのが、大きなリビングルームで天井高5メートルあり、体育館のような空間です。大は小を兼ねるつもりでつくりました。パーティをするとかなりの人数を許容し、とても楽しかった。しかし、年代を重ねてきた現在、気がつけば寝る以外はお茶の間のダイニングにいるだけで、リビングルームは単なる通路としてしか使いません。車と同じようにいつかはコンパクトな家に住むことも考えていくのかなという気がしています。
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