アーキプラス

2014.10.31

34.マラソン試走

コラムcolumn
ニューヨーク・シティ・マラソン2014 開催3日前、セントラルパークのゴールにて
GET YOUR PROUD ON       GET YOUR EUPHORIA ON
GET YOUR VICTORY POSE ON   GET YOUR NEW YORK ON
誇り・陶酔感・勝利のポーズ・ニューヨーク を掴み取ろう!
 フルマラソン出場1ヶ月前にそのコースを試走することにしている。東京、奈良、京都、大阪いずれも試走をした。今年は、5倍応募の中で当選した第1回福岡マラソンの試走である。体を慣らすのが目的である。42kmを1ヶ月前ぐらいに実走するのは宇佐美彰朗さんのランニング教室での教えでもある。途中休んでもいいから、1日かけて走ると体に記憶され、走力がつくということであった。さらに実際のコースの環境でシミュレーションをすることにより、心構えがつき、精神的に安定する。たいした記録を出すわけでもないのに少し大げさかもしれない。そのような準備をきちんとすることは、中学生の頃多少あったような気もするが、これまであまりなかったことである。これを勉強とか、仕事にも応用できれば人生少し違ってきたかもしれない・・・・・。しかし、街を駆けることをいろいろ楽しみたいというのも動機のひとつである。
 金曜日の夜に福岡に行き、朝9:00ごろ天神前をスタート西に向かう。土曜日のため同じように試走をする人が多い。つるんで走る人たちもいるが、たいていは一人のランナーである。東京から来ているのは私ぐらいか?準備のよい人たちだから、みな結構速い。大会のテーマは「都市を走る。海を走る。未来を走る。」である。まもなく長浜地区を通る、やがてシーサイドももち地区にかかる、福岡ドームのあるホークスタウン、福岡タワーなどシンボリックな建物が続く。未来的な都市景観だが、バブル時代の産物か?マリーナタウンあたりから海に近づき、生の松原から海岸線が平行する。遥か彼方に福岡タワーが見える。このあたりまでくると連坦した市街地が完全に途切れてくる。元寇防塁跡という看板があちらこちらに見える。大陸に最も接近した都市であったのがわかる。少しそれて新しく広い道にでて、上り坂になる。すると突如、九州大学の学研都市が現れる。伊都地区に今年移転した新キャンパスである。周りは田園である。都市から隔絶された奇妙な空気が漂う。教育研究は、このような世離れした環境でよいのかな?と思った。ここで折り返し再び海に向かう。そして海沿いをさらに西に向かう。福岡タワーも霞んで見える。山道を越えるとまた海が見える。福岡湾から玄界灘に到達した。波も勢いづいてくる。このあたりから、サーフィンをする人が多く見えた。道路の脇には、おしゃれなカフェが立ち並ぶ。ずいぶん遠くまできた気がするが、自然を日常的に楽しむことができる福岡の都市生活があるのかと思うとうらやましく思った。それから田園を抜け、ゴールの糸島市役所志摩庁舎である。これがクライマックスかと思うと少しさびしい気がした。
 そのあと、建築家仲間とニューヨークに行った。一日遅れでの合流であったが、その代わり2日延泊をしてニューヨークシティマラソンのコースを試走してみようと思った。別にエントリーしているわけではないが、1970年から続く、5万人参加の世界最大のマラソン大会である。昨年はハリケーンの影響で中止となった。ニューヨークを構成する5つの地区全てを貫くワンウェイコースを見てみたかった。スタートのスタテン島から200万人もの観衆でスタートからゴールまで切れ目なく、埋め尽くされるといわれる。ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、マンハッタンをめぐり、ゴールはセントラルパークである。試走の前日朝のジョギングで事は起きた。多くのランナーが連なっている。イーストリバーの朝風を浴び、都市と海の光景に魅入っていたところ、凹凸の路面に足元を取られ転倒、肩を強打してしまった。肩鎖関節脱臼。福岡マラソンどころではなくなった。翌日、痛む肩に三角巾をして、コースの要所を見学した。想像以上に長く広く変化がある。セントラルパークのゴールの看板を見て、来年はここでリベンジをしようと思った。
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