アーキプラス

2015.06.30

42.光るテーブル

コラムcolumn
 2005年事務所を現在の西早稲田に移転する際、事務所で使う照明器具を新たにデザインした。ひとつは蛍光管を天井からつるしたタスクライトで、上下に光を放ち、下は作業面を照らし上は天井への反射による間接照明を兼ねた照明である。
 大小2つのタイプがあり、①600㎜×2100㎜のデスクの上に65㎜×65㎜の断面で長さ950㎜のもの、②720㎜×2400㎜の打ち合わせテーブルの上に掛けるもので105㎜×105㎜の断面で長さ1350㎜のものである。①はロール簾の巻き上げ金物を利用し、滑車の原理でヒモを上げ下げすることでスムーズにワンタッチで上下できる機構とした。10年間不具合なく使用しているが、見た目も作成時とかわらない。2mmのステンレス板でつくったが、もう少し軽くしたほうが動きはよりスムーズであったかもしれない。②は吊りワイヤーの金具を使った。同じく上下調整できるが、左右別々にスプリングを組み込んだストッパーを少しずつ動かしながらの調整で少々面倒臭い。これはほぼ固定して使うので重さは問題ない。双方ともステンレスの板を加工したものであるが、②は長手方向のパネルが回転できるようになっている。への字または逆への字型にして、真下または真上のみの配光ができるようにした。ただステンレス板ではあまり反射の効果がなく、これはあまり意味がなかったように思った。このように試行錯誤ではあったが、本当はさらに進化したものをつくって行きたいと思っている。しかし、自腹でつくる器具は、何度も作れないのが残念である。
 もうひとつ同時に光るテーブルも作った。これは透明のファイバーグレーチングを滑らかに光らすため、下に乳白色のアクリルでボックスをつくり発光体とした。また、全体を軽く作るため、透明のアクリルパイプで6本脚とし、一部の金具以外はオールプラスティックでつくった。思惑通り、6人掛け~8人掛けの大きな光るテーブルができた。これだけで部屋の照明となり、空間の主役が生まれた。特に他を消してこれだけつけると存在感が増す。これだけでバーのような空間になる。パーティをするときも光らせると華となった。ただ、これだけだとテーブルの上に置かれたものは別に上から照明をつけないと逆光で見えない。そこでガラスのお皿を並べ、下からの光で食べ物を透過させて見せた。トマトや緑の葉はよりカラフルに見えた。
 事務所のためにつくったものだが、同じものがほしいというリクエストがあり、今まで、何箇所かのために製作し、10数脚がうまれた。しかし、組立てが難しい。事務所の人間が組み立てるわけだが、よほど熟達者でないと組み立てられないのが難点である。ステンレスワイヤーのブレースの調整などそれなりのコツをつかまなければならない。製品とするにはいくつかの壁を乗り越えなくてはならない。
 これらは全てマックスレイという照明メーカーにお願いして事を進めた。付属部品の調達などを容易にするためであった。超大手のメーカーと違ってこのような専門メーカーであればこそ上手く行けたのだと思う。最近また製作をお願いしたら、照明メーカーが照明以外の製品(家具)をつくるのはいかがなものかという会社の方針に変わり、できなくなってしまった。そこで家具屋さんに頼んでみた。しかし、照明など電気を組み込んだものは電気用品安全法の基づく経産省の試験を経なければ製品として出荷できないと言われた。仕方ないので照明部分と家具部分を別々に照明メーカーと家具屋さんに発注し、電気工事屋さんにアッセンブルしてもらった。
 集合住宅の共用空間にこれを常夜燈のように設置し、コモンスペースのシンボルとなるようにしよう考えている。本当はこのような「あったらいいもの」を製品化し、既製品にはない実用的なものを適度な安価で供給したいのだが、こちらの努力不足もあり、実現には程遠い。が、夢は叶えたいと考えている。
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