2015.09.30
45.デザインの盗用?
コラムcolumn
上井草の集合住宅(2008年竣工)
撮影 齋部 功
撮影 齋部 功
デザインの盗用が問題になった。建築とはジャンルが違うのでそのコメントについては避けるが、建築の場合はどうだろうか。建築の設計に特許なるものがあることは、以前から知っていた。免震構造などの高度な技術や工法についての特許はわかりやすい。しかし、分譲マンションのプランニングでも存在する。特殊なシステムには、ディベロッパーの関係者が参入障壁となる防御手段として特許があるそうだ。しかし賃貸では、あまり適用されていないということであった。それまで設計してきたもののすべてが賃貸の集合住宅だったのであまり気に留めなかった。しかし、私の事務所では以前からヤチダヨリ#16円筒状空間や#38立体居住空間で紹介したような特徴ある空間のシステムを取り入れている。自分がオリジナルに考え出したものが、それ以降に特許を取られて使えなくなるのは嫌だから、新しい仕組みをつくったと思った時は、できる限り雑誌などで発表したり、内覧会等で公表し、ある種の証明みたいなものをつくろうと思った。実際には、確認申請など公的な書類があれば、実施した時期等も明白にはなるわけだが。というより、自分で作ったシステムを公表し、それを参考にしてもらって、さらにより良い形で応用してもらったほうがよいと考えていた。
7年前、当事務所では初めての分譲集合住宅を雑誌に発表した。その後ある建築家から連絡があった。「あなたの設計した集合住宅は私が特許を持っている仕組みに似ているので相談したい。」ということであった。逆梁を用いて空間を立体的に利用する仕組みである。私は今までいくつも同様の賃貸の集合住宅を設計してきたし、雑誌にも発表してきた旨を告げる。すると設計したものに付加価値が生じるのでその企画をしたディベロッパーに話がしたいということになった。彼はまだそのシステムの建物はつくっていないらしいが(机上の設計ということである)、日本で特許を取り、外国でも取る予定であることを告げられた。そこで私は知り合いの弁護士さんを介して、弁理士の方に相談をした。すると「どう思いますか?谷内田さんの仕組みは今までいくつも作っているものだし、いろいろなものを絡めたものであって、特許権を侵害するものと思いますか?」といわれた。答えは当然「いいえ」である。結局その後、その建築家からは連絡がなくなった。数が増えれば多くのディベロッパーから特許料を取ることができると見込んだのであろう。しかし、特許の申請は認められとしても、あまりに単純すぎて、対抗できるようなシステムではなかったように思う。
総じて、建築の設計にある種の模倣は必要なのではないか。学生の勉強には当然必要である。ただ、設計条件は同じということはあり得ない。いいと思った部分をいかに取り入れ適合させるにも相当に骨が折れる。オマージュ(敬意、賛辞)インスパイア(感化、啓発)という方法での模倣もある。以前から、他の建築家の見学会にはよく行く。あまり感心しないものもあるが、多くの創作のための努力を見ることができる。感化され良い影響を受けることが多い。
立体居住空間を鉄筋コンクリート造と木造ツーバイフォーでつくることをある企業と共同開発している。こちらの計画技術供与が多いが、数多く積み重ねてゆくことにより、新しい展開を見ることができることを期待している。1人で計画技術を抱え込んでいてもあまり意味がないと思ったからである。
7年前、当事務所では初めての分譲集合住宅を雑誌に発表した。その後ある建築家から連絡があった。「あなたの設計した集合住宅は私が特許を持っている仕組みに似ているので相談したい。」ということであった。逆梁を用いて空間を立体的に利用する仕組みである。私は今までいくつも同様の賃貸の集合住宅を設計してきたし、雑誌にも発表してきた旨を告げる。すると設計したものに付加価値が生じるのでその企画をしたディベロッパーに話がしたいということになった。彼はまだそのシステムの建物はつくっていないらしいが(机上の設計ということである)、日本で特許を取り、外国でも取る予定であることを告げられた。そこで私は知り合いの弁護士さんを介して、弁理士の方に相談をした。すると「どう思いますか?谷内田さんの仕組みは今までいくつも作っているものだし、いろいろなものを絡めたものであって、特許権を侵害するものと思いますか?」といわれた。答えは当然「いいえ」である。結局その後、その建築家からは連絡がなくなった。数が増えれば多くのディベロッパーから特許料を取ることができると見込んだのであろう。しかし、特許の申請は認められとしても、あまりに単純すぎて、対抗できるようなシステムではなかったように思う。
総じて、建築の設計にある種の模倣は必要なのではないか。学生の勉強には当然必要である。ただ、設計条件は同じということはあり得ない。いいと思った部分をいかに取り入れ適合させるにも相当に骨が折れる。オマージュ(敬意、賛辞)インスパイア(感化、啓発)という方法での模倣もある。以前から、他の建築家の見学会にはよく行く。あまり感心しないものもあるが、多くの創作のための努力を見ることができる。感化され良い影響を受けることが多い。
立体居住空間を鉄筋コンクリート造と木造ツーバイフォーでつくることをある企業と共同開発している。こちらの計画技術供与が多いが、数多く積み重ねてゆくことにより、新しい展開を見ることができることを期待している。1人で計画技術を抱え込んでいてもあまり意味がないと思ったからである。
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