アーキプラス

2015.12.30

48.「辛い」を「楽しい」に変える

コラムcolumn
 来年3月13日の横浜マラソン2016に出場するためにトレーニングを開始した。12月6日には、コースの約半分20kmを試走した。みなとみらい大橋からスタートし、パシフィコ横浜、赤レンガ倉庫、横浜税関、県庁、横浜スタジアム、山下公園、三渓園など横浜の名所を巡り、根岸駅、磯子駅、新杉田駅を過ぎた横浜南部市場が折り返し点である。そこまで走ってみた。久しぶりの長距離は楽ではない。冬の曇り空の中でのランニングは辛いものである。新杉田から電車で荷物のある横浜駅まで戻り、駅前のスカイビルにあるスパで温まって帰った。また2週間後の日曜日の12月20日に折り返し後の半分のコースを走ってみようと思った。その日も、妻はゴルフのコンペに出場だと言っていたからである。後半は、高速道路を走ったり、立ち入り禁止部分もあるので、ほぼ前半の逆を走るつもりであった。
 12月20日は横浜でクラブワールドカップの決勝戦が行われる。折角だからそれも見ようと考え、急遽、チケットを購入した。直前で優勝候補のバルセロナのネイマールが負傷し、メッシも体調が悪いのが心配されていたが、決勝は予想通りヨーロッパ代表のスペイン、バルセロナと南米代表のアルゼンチン、リーベル・プレートの試合になった。日本のサンフレッチェ広島も善戦し、3位決定戦もアジア代表中国、広州恒大との対戦となり、その試合も見ることができるようになった。
 当日早朝、家を出て新宿から湘南新宿ラインに乗る、スペイン系の白人がたくさんいる。よく見るとバルセロナのサポーターではない。アルゼンチン、リーベル・プレートのサポーターたちであった。試合開始まで10時間以上あるのに一足早く、横浜見物にでも行くのであろうか?横浜駅に荷物を置き、京浜東北線で新杉田まで行く。快晴で風もほとんどないランニング日和であった。2週間前よりも気持ちよく走ることができた。ペースもここ最近の中では一番快調であった。終盤、ゴールのパシフィコ横浜付近で大勢のリーベル・プレートのサポーターたちと出会った。クラブの応援歌を歌いながら、楽しそうに行進している。彼らは見物というより、応援を待ち切れず、横浜でデモ行進をやっているようなものであった。
 いつものスパで一休みしてから、横浜線で横浜国際総合競技場のある小机に向かう。車内もリーベル・プレートのサポーターたちでいっぱいであった。どこかで応援歌を歌い始めると一斉に声をあげ、車内は大騒ぎとなった。途中で、バルセロナのユニフォームを着た日本人たちが乗り込むと大ブーイングが起こった。しかし、フーリガンと呼ばれるような無法者たちではなかった。お祭りを楽しむような楽しい雰囲気であった。競技場に行く途中にある屋台にも、リーベル・プレートのサポーターたちがたむろして、すっかりなごんでいる。地球の裏側からであるので、弾丸ツアーであろうと、相当費用がかかるはずである。それだけチームを誇りに思い、愛情があるからだろう。
 会場ではサポーター席に入りきらなかったリーベル・プレートの赤いシャツを着たサポーターたちが各所で白い風船を振り、歓声をあげていた。それに引き換え、世界人気のバルセロナは、サポーター席のみで非常におとなしく見えた。同様に三位決定戦のサンフレッチェ広島も広州恒大に比べても非常にさみしく見えた。国民性の違いか?結局、結果はメッシ、ネイマール、スアレス、イニエスタなどワールドカップでも大活躍した世界のスーパースターを擁するバルセロナが順当勝ちとなった。お祭りはバルセロナの選手たちの歓喜とともに静かに終わった。20kmのランニングと2試合のサッカー観戦。家に着いたら午後11時をまわっていた。疲れはしたが、それを吹き飛ばすような楽しい一日であった。
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