アーキプラス

2017.09.30

68.北海道の旅2017

コラムcolumn
 この8月に北海道に行った。これまでに何回も訪れたのだが、函館には行ったことがなかったので一度は訪れようと思い、新千歳でレンタカーを借り、洞爺に立ち寄り、函館に向かった。3日間滞在したが、あいにく天候が悪く、1度も函館山からの夜景を見ることはできなかった。朝市や五稜郭、赤レンガ倉庫のベイエリア・レトロな雰囲気の元町など一通りの観光をしたが、「公立はこだて未来大学」(設計:山本理顕設計工場2000年竣工)が素晴らしかった。外部の人も中に入ることができ、内部は開放的な一体空間でこの建築の概念から、独自の新しい教育と研究が生まれることがよくわかった。お見事!
 その後、余市、小樽、札幌と行くためにニセコに立ち寄った。3年前洞爺に住む友人と訪れたスキーをしたときに気になっていた場所であった。何故かオーストラリア人ばかりのニセコグランヒラフのゲレンデがあったからだ。一体どこにそんな魅力があるのか?夏はどうなっているか覗いてみようと思い、コンドミニアムに泊まった。ニセコは道の駅からして洒落ていた。そこからしばらく行ったところにニセコグランヒラフがあった。ゲレンデのすぐ近くの入り口のところに予約していたコンドミニアムがあった。ガラス面が大きく、シンプルなデザインであった。冬はほとんどオーストラリア人が宿泊するという。2ベッドルームで90㎡の部屋だが、調理道具等がつき、暖炉のあるゆったりとした部屋であった。オーストラリアの人は新千歳空港に直行便でやってきて、バスで直行するらしい。時差が1時間しかなく、季節が逆で夏の時期のバカンスに良質のパウダースノーが楽しめるということで、2000年代はじめからオーストラリア人観光客が増え始めたそうである。オーストラリア資本による不動産開発が進み、地価上昇率全国1位になったこともあるといわれる。2000年代後半からはアジア地域でも注目され、香港やマレーシア資本による開発も進んでいるそうだ。このコンドミニアムでは各住戸に入口が二つあった。一つはゲストの入り口、二つ目はオーナーの入口であった。ここは倉庫となっており、オーナーの荷物が保管されているようだ。室内には立派な浴槽があったが、共用の温泉もあり、黒を基調としたシンプルなデザインで内部対外部が対称となる露天風呂がつくり込まれていた。これもオーストラリア人にも好評らしい。そういえば、鄙びた山中の露天風呂に行ったら、大勢のオーストラリア人が来ていた。味をしめたらしい。通常、夏季にはレストランはクローズなのだが、夏休みのピーク時であったため営業していた。愛層のよいフランス人がサービスしてくれた。料理もリーズナブルな値段でおいしかった。全体としては、かなり上質のリゾート施設であった。
 外資が求めているのは日本ではあまり一般化されていないこのような分譲型のコンドミニアム・スタイルだが、ニセコヒラフのゲレンデ近くは国定公園になっていて、分譲型の宿泊施設を作ることには制限があった。しかし、環境省が2011年に建設条件を明示してから、既存のホテルの売買が一気に進み、ホテルの閉館が相次いだ。ところが、いざ分譲型ホテルを建設しようとすると、国定公園を管理する北海道がなかなか許可をださず、建物が取り壊され更地のままになっているところも目立っている。しかし、開発は着々と進んでいた。
 30年前の日本のリゾートブームの頃、苗場に16戸の賃貸集合住宅をリゾートスキー場の前に設計した※。各部屋は吹抜けのあるメゾネットでそこには大きな丸い窓にゲレンデの景色が映し出されダイナミックなピクチャーウィンドウとなっていた。とても気に入ってよく利用していたが、だいぶ前にオーナーが手放し、しばらく会員制のリゾート施設になっていた。しかし、その会員制のリゾート会社が倒産した。今頃どうなっているのだろうか?このニセコのリゾート施設の様な利用方法はないものかなとふと思った。

※苗場プリヴェ[1988年竣工 設計:ワークショップ(北山恒・木下道郎と共同)]
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