アーキプラス

2019.11.12

87.スイスの食堂車

コラムcolumn
 この夏、予定通りモントルーを中心にしてスイス旅行をしてきた。スイスは、九州ぐらいの広さの国だが、人口は800万人で九州の1300万人の6割ぐらいである。山岳地が多いところから、観光用の鉄道がいち早く発達し、全国に鉄道網が張り巡らされている。しかし、山岳地を除くと意外と平坦な土地が多く、主要都市(チューリッヒ、ジュネーブ、ローザンヌ、バーゼル、ベルン、ルッツェルンなど)はインターシティで1時間~2時間で結ばれている。時間はとても正確で、非常に利便性が高く、居心地が良かった。鉄道網は山の中まで張り巡らされ、その奥に行くとケーブルカーやロープウェイに繋がれ、短時間で目的地に行くことができる。
 モントルーを根城とし、ローザンヌ経由でほとんど毎日早朝から、建築を見に出かけ、夜の音楽イベントに間に合うように戻ってきた。モントルーは人口2万2千人程の小さな観光都市であるが、このフェスティバル中はスイス国内外からたくさんの人が集まってくる。モントルー・ジャズフェスティバルは単なる音楽祭ではなく、2週間の午後から深夜にかけての連続したお祭りであった。レマン湖の畔に各国料理の屋台はもちろんのこと、工芸品、お土産物、ファッション、2キロほど延々と仮設の店舗が続き、途中にイベント会場が点在する。昼はダンス教室やアマチュアのバンドの演奏があったり、登山列車の中でのコンサートやレマン湖上の遊覧船コンサートなどの催しがあった。メインのコンサートは夜の8時に始まり、11時すぎには終了する。その後もイベントもあり、クラブなどは深夜2時3時まで延々と続く。遠くからやってきた客はホテルに宿泊するが、多くの人達は近くの都市から鉄道や自動車でやって来ているようだ。早朝に鉄道で帰る人をよく見かけた。また市中心部の駐車場は満杯となるので、遠くの駐車場まで深夜無料バスが頻繁に走っていた。
 こうした忙しいスケジュールをこなせたのは列車の食堂車のおかげであった。食堂車はチューリッヒとジュネーブを結ぶ路線は、東海道新幹線の様でかなり頻繁に出て、ビジネスの路線となっている。食堂車はインターシティには必ず付いていた。2階建てになっていて、1階はビストロで軽食を出し、2階はレストランとなっている。各列車ともメニューはほとんど同じなので、すべてのものを試してみた。朝食セット、コーヒー、ワイン、つまみ、パスタ、タイカレーどれでも結構いけた。朝晩の食堂車は通勤客のサロンとなっていた。コーヒーを飲みながら、パソコンに向かったり、新聞を読んだりしている。数人で集まり、会話を楽しんだり、帰りは、ビールを飲みながら談笑していた。自動車に対抗して、鉄道の利用を促進させるためのサービス事業のようだ。どの時間でも利用できるため、忙しく動く旅人にとっては、ほんとうに便利な施設であった。物価はヨーロッパの中でも一番高い国でもあるが、そこそこのものを比較的安価で食べることができた。20年前に行った時よりは、相当に簡略化されてはいたが、車両も多くなり、とても使いやすかった。
 その鉄道だが、内部空間がとても居心地良かった。インターシティ、地方支線に限らず、ゆったりとしたシート、人もまばらであった。窓が大きく、吊り広告など一切なく、どれもとても美しいインテリアであった。通勤時に立って乗っている人は100%ない。これはメトロ、バス、トラムいずれもである。何故空いているのに、運営が成り立っているのだろう?2階建であったり、多両編成だったり、ワンマン運転で、改札がなく、駅員も少なく、合理化が徹底しているのだろうと思った。日本もいつかそのようになるといいなと思った。
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