アーキプラス

2020.07.31

90.モントルー・ジャズ・フェスティバル2019

 今年はコロナ禍で日本国内の旅行でさえ自粛せざるを得ない状況であるが、去年の7月は念願のモントルー・ジャズフェスティバルを見にスイス旅行をしていた。行くのが一年遅れていたらと思うと去年行っておいて良かったというのが率直な気持ちである。また、今年の9月は、ブラジルでの生活が長かった建築家のNさんの取り計らいで建築家仲間と念願のブラジル旅行をする予定であった。2月国内でコロナ感染が現れたとき、ブラジルでは何もなかったので、日本人のブラジル旅行が受け入れられるかを心配していた。しかし、今ではアメリカに次いでブラジルは世界第二の感染者、死亡者の多い国となっている。その被害の甚大さは予測できないが、おそらくこの数年又はそれ以上、ブラジルに行くのは無理で、Nさんや私を含めて今後旅行するのは非常に厳しい状況であると思う。1年前には思いもしなかったコロナウイルスによるパンデミックで世界の様相、個人の行動に劇的な変化が生じている。
 モントルー・ジャズフェスティバルは、1967年にクロード・ノブスという人が創設し、毎年7月に約2週間、繰り広げられる世界最大級の音楽イベントである。STRAVINSKIという大ホール(ストラビンスキーは冬季にスイスに訪れ、「春の祭典」はモントルーで書き上げたといわれ、通りの名にも記されている。)は一番大きな会場でメインイベントが行われる。フェスティバルのオープニングにエルトン・ジョンのコンサート・ツアーのファイナルを行っていた。これには間に合わなかった。会場は、ほとんどがスタンディングで奥にシート席があり、そこは指定席だが、200から300スイスフラン(ドルと同じぐらい)でとても高い。
 その次は、CLUBといわれる中ホール。ステージ側にテーブル席があり、軽い飲み物がとれるようになっている。その後ろに指定席が並びこちらがメインとなっている。ジャズクラブといった感じだが、アフリカ系、ブラジル系、ポップ系いろいろなジャンルのステージが用意されている。ここも100スイスフランで安くはない。もう一つはLABで全部がスタンディングの形式のいわゆる「クラブ」のスタイルである。オーディエンスも若者中心でだいたい3グループ用意され、午後8時から11時過ぎまで続く。すべてスタンディングなので、年寄りにはきつい。私は、トム・ミッシュというUKの若手人気屋ギタリストのグループを聞いた。期待通りの出来でよかったが、昼間の他の都市の建築見学の疲れもあって、3つ目のグループはパスした。こちらは70~90スイスフランだが、決して安くはない。
 その他で有料のイベントはBOATSとTRAINSだ。BOATSはレマン湖の遊覧船で2セッション同時に最上階とその2階下で繰り広げられるイベントである。テーマは「BRASIL」「ROCK」「FUNKY JAZZ&BLUES」で3時間ぐらい湖を遊覧しながら船内は大騒ぎとなる。TRAINSは観光電車(パノラマカー又は登山電車)の中で「NEWORLEANS」「BLUEGRASS&ROCKABILLY」などが楽しめる。これは65スイスフランで乗り物代や観光代も含んでいるので楽しめる割合にかなりリーズナブルであった。
 その他は野外ホール、ダンスレッスン、無料イベントが数多く用意されている。レマン湖畔沿いに約2㎞ほどの路地に屋台や露店が立ち並び、至るところでストリート・ミュージシャンがパフォーマンスしている。子供からシニア世代まで楽しんでいる夏の一大イベントであった。
 今年は、コロナ禍でスイスも多くの感染者、死者を出し、人口860万人の国だが、3万を超える感染者と1000人を超える死者が出た。その後の徹底した対策で現在では安全な国ランキングでドイツを抑え世界1位になっている。しかし、このフェスティバルも当然中止となった。この先どういう形で開催されるがわからない。数年経たないと以前のような形式では開催できないだろう。去年のフェスティバルに行ってみて、楽しむ術がわかったので、また開催されるときには、ヨーロッパの旅行を楽しみながら、聴きたいアーティストの公演をピンポイントで訪れたいと思っている。
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