アーキプラス

2017.08.31

67.丸長閉店

コラムcolumn
 とても大切にしていたラーメン店二店がこの6月までで店を閉じた。
 ひとつは中野区沼袋にある「丸長」である。1997年から2005年まで中野区松が丘にわが事務所を構えていたときにお世話になった店である。以前の仕事場は港区六本木にあったのだが、夜遅くまで仕事をしていたので街の喧騒とは全く無縁の生活であった。静かなところで仕事するのもいいかなと思い。住宅地に事務所を構えた。周りには飲食店が全くなく、客席が6畳もないような小さな店の[丸長]に自然と足が向いた。[丸長]はつけそば中心のラーメン店グループ「丸長のれん会」の一員で城西地区に多くある。夜遅くまで働いているスタッフ達を見て、奥さんは母性本能が働いたのだろうか、いろいろ面倒見ていただいたようでした。事務所のお花見の時は、お花見定番の稲荷寿司と卵焼きを用意していただいた。特別に定食の様なものも用意していただいき、いわゆる社員食堂の様に利用させてもらった。事務所を現在の西早稲田に移転してからも、その濃いめの味付けが懐かしくなり、年に2,3回は顔を出していた。行くと必ず話題となるのがスタッフの誰がいつ来たということで、それぞれの動向をいつも気にされていたようであった。数年前ご主人が病気で倒れられて、営業は奥さんひとりで昼間だけ営業していた。マンションがたつことになり、その立ち退きらしい。
 もうひとつは、大阪JR難波駅近くにある「とも狼」である。今の西早稲田の事務所の近くにある「北狼」というラーメン店から唯一暖簾分けした店である。「北狼」(*ヤチダヨリ#64エスニックタウン参照)は以前から贔屓にしていた店だが、事情があって店をクローズしてしまった。以降、独特でアバンギャルドな味を求めて、「とも狼」に関西方面に行く際には必ず立ち寄るようになった。むしろ「とも狼」に行けるから、好んで関西に行くような日々が続いていた。その「とも狼」もこの6月に閉店した。商売は順調だったそうだが、ご家庭の事情がらみの閉店であると聞いている。残念!またの復活の話もあるそうなので期待したい。
 また数年前には、事務所が中野区松が丘にあった時期にスタッフ行きつけの新井薬師前の居酒屋「忠勇」が閉店した。ここはことあるごとに利用させていただいた。若い人に人気があり、劇団で活動する人達のアルバイトの場でもあった。御主人の体力的な問題からだそうだ。お世話になったみんな(事務所のOB,OGも含めて)で閉店前に押しかけた。同じような理由で西早稲田のカレー屋さん「夢民」も38年愛され続けた店を5年前に閉じた。しかし、この機会に調べてみたら、去年から、ダイバーシティー東京 プラザのフードコートで復活したらしい。早速行ってみようと思う。
 商業施設はおおよそ10年以内に消滅することが多い。償却期間が短いからであろう。事務所のある西早稲田では、もっとその入れ替わりが激しい。それでも何十年と継続する店もある。設計事務所は継続することは難しい業種である。景気の影響をいち早く受け、その都度新しい問題を抱えながら、絶えず違う回答を出して行かなければならない。業務内容も新しい項目がどんどん増えてきており、近年作業量は増え続けている。しかし、過去に遡る問い合わせも非常に多い。そういったことからも継続してゆかねばならない。事務所ならではのノウハウはそれなりに持ち、オリジナルな仕組みを作ってきたつもりである。それを生かし、さらに発展する余地を残したいと考えている。それに対応する仕組みを検討中である。この10月、さらに10年、20年と継続する組織に変えて行く予定である。
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